――モブ農家として感じる、栽培のリアル――
今年のにんじんは、例年より虫食いが多く、
畑に立ちながらいろいろと考えさせられるシーズンになりました。
作業をしながらふと、
「無農薬栽培は本当に成り立つのか?」
という、これまで何度も耳にしてきた議論を思い出しました。

右 正常
SNSやメディアでは
「ヨーロッパではオーガニックが主流」
「日本ももっと無農薬に向かうべきだ」
といった声を見かけることがあります。
一方で、実際に畑に立つ身として感じる“現場の感覚”は、
少しだけ違うところにあるように思っています。
今回は、その違いについて、
できるだけ穏やかに、誰かを否定することなく書いてみます。
無農薬は「できない」わけではない、けれど……
無農薬で野菜を育てること自体は、決して不可能ではないと感じています。
年によっては虫害が少なく、
見た目もきれいな野菜が収穫できることもあります。
ただ、農家として日々考えるのは
「毎年、同じように続けられるかどうか」 です。
ある年はうまくいっても、
別の年には大きな虫害に遭う。
そうなると、収量が大きく落ちたり、
出荷できる割合が極端に下がってしまうこともあります。
「できる年もあるけれど、できない年もある」
という状態は、
仕事として農業を続ける上では、なかなか厳しい面があります。
無農薬栽培に価値を感じ、
虫食いや不揃いを受け入れてくださる市場があることも理解しています。
ただ、一般的な卸や小売の現場では、
どうしても外観が重視される場面が多いのも事実です。
日本の「見た目基準」は、とても細やか
「ヨーロッパではオーガニックが当たり前」と言われることがあります。
環境への意識が高いこともあり、
多少の見た目の違いが受け入れられやすい文化があるのだと思います。
一方、日本では長い時間をかけて
・きれい
・均一
・適度なサイズ
といった基準が大切にされてきました。
これは良い・悪いという話ではなく、
食文化や流通の中で自然に形づくられてきたものだと感じています。
農家としては、
そうした基準に合わせて作ることを求められる場面も多く、
見た目を安定させる工夫が必要になることと向き合っています。
オーガニックが「求められていない」わけではないけれど
オーガニック野菜への関心は、確かに高まっていると感じます。
ただ、実際の売り場を見ていると、
多くの場合、優先されやすいのは
・見た目
・価格
・日持ち
といった、とても現実的なポイントです。
同じ見た目、同じ価格であれば、
オーガニックが選ばれることもあると思います。
一方で、
・少し虫食いがある
・価格が上がる
となると、選ばれにくくなる場面も少なくありません。
これは、消費者が悪いという話ではなく、
限られた時間と条件の中で選択している結果なのだと思います。
誰かが悪いのではなく、「仕組み」の話
農家も、消費者も、
それぞれがそれぞれの立場で、
自然な選択をしているだけなのだと感じます。
結果として、
見た目を揃えることが前提の市場ができ、
無農薬や規格外の野菜が
生産者にとって挑戦しづらくなっている。
それは誰かのせいというより、
長い時間をかけて形づくられてきた「仕組み」なのだと思います。
現実を踏まえながら、自分に合う形を探す
私は有機栽培を続けていますが、
同時に慣行農法の考え方や技術も学んでいます。
無農薬だけが正解でもなく、
慣行農法だけが正解でもない。
それぞれに良いところがあり、
それぞれに難しさがあります。
大切なのは、
「自分の畑で、無理なく続けられる形は何か」
を探していくことなのだと思っています。
誰かを否定するためではなく、
それぞれの立場や現実を知り合うことで、
農業がもう少し身近に、理解されやすくなればいい。
そんなことを、
虫食いのにんじんを手にしながら考えていました。
🌱 畑にいるよ
畑にいるよ。
虫に食われた人参を見ながら、
「続けられる形って何だろうな」と考えてます。


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